血管外科

下肢閉塞性動脈硬化症

下肢閉塞性動脈硬化症

生活習慣病から動脈硬化になり、腹部や下肢の動脈が狭くなったり(狭窄)、詰まったりする(閉塞)ことで、下肢に血液が充分に行き渡らなくなって生じる病気です。 最初に出やすい症状としては、歩くと大腿や下腿の筋肉に痛みが出現するものの、立ち止まって休憩すると痛みがなくなり、またしばらく歩けるようになる「間欠性跛行」があります。更に動脈硬化が進行すると、じっとしていても下肢が痛む「安静時痛」や「皮膚の潰瘍」、足先の皮膚や筋肉,骨などが血液の流れが不足して死んでしまう「壊疽・壊死」といった症状が出現します。

「安静時痛」、「皮膚の潰瘍」、「壊疽・壊死」といった症状の出るものは「重症虚血肢」と呼ばれ、 血液の流れを改善させ、血液が充分に足先まで流れるような処置(血行再建術)を行わない限り、下肢を切断しなければならなくなる危険が非常に高い状態です。間欠性跛行の患者さんは、血行再建術の相対的適応(状態に応じて行う)、重症虚血肢の患者さんは絶対的適応(状態が許せば行わなくてはならない)とされています。治療の手段は薬物治療、血管内治療、手術などがあり、これらを単独または複数組み合わせて行います。 人工透析を受けている方に、「下肢閉塞性動脈硬化症」を併発しているケースが多くみられます。当院では、(自院の人工透析患者に限らず)他院からの患者さんも受け入れて治療をおこなっています。

薬物治療

高血圧症、高脂血症、糖尿病などの基礎疾患をコントロールする薬物治療は必須です。それに加え各種の抗血小板薬(血小板の働きを抑えて血液が固まりにくくする)、抗凝固薬(血液中の凝固因子というたんぱく質の働きを抑えて血液が固まりにくくする)、血管拡張薬(下肢の細い動脈を柔らかくし拡張させる)などを患者さんの症状・状態に応じて単独または複数組み合わせて投与します。多くの場合、外来での投与になりますが入院の上点滴治療をすることもあります。

血管内治療(経皮的血管形成術:PTA、金属ステント留置術)

局所麻酔下に、下肢の付け根または上肢から血管内にカテーテルを挿入し、狭窄している部分を、バルーンカテーテルで拡張させたり、金属ステント(ステンレス製の網目状の筒)を挿入することで拡張させて、下肢への血液の流れを改善する治療法です。全身麻酔が不要で、通常の手術と比較して体の負担が少ない、痛みが少ない、入院期間が短くて済む、といった利点があります。

治療前

血管内治療前

治療前

血管内治療後

手術

血管内治療は病変の場所や状態によっては実施が困難だったり、長期的にみて治療効果が維持できない(病変がぶりかえしたり、悪化してしまう)ことがあります。そのような患者さんには手術が必要となります。下肢閉塞性動脈硬化症に対しては、自家静脈、人工血管によるバイパス手術(詰まっている動脈を迂回して新しく血液の流れる経路を作る)や血管形成術(病変のある動脈を直接切開し、病変を取り除く)を行っています。

症例により、血管内治療を併用(ハイブリッド手術)します。バイパス手術にはいろいろな方法がありますが、当科ではいかなる手術にも対応しています。よその施設で下肢の切断を勧められた患者さんにも積極的に手術を行うことで高い確率で救肢に成功しています。

治療前

バイパス手術前

治療前

バイパス手術後

治療前

虚血性潰瘍のバイパス手術前

治療前

虚血性潰瘍のバイパス手術後

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